Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 167.285 Zeichen · 330 Bildschirme
七十郎は立ちどまって、ほれぼれと牛を見おくった。みごとだな、と彼は思った。みごとに堂々としている、あれは飼われるべき動物ではない。あのくらいの牛になると、人間が飼うのは不自然だ、と思った。
牛はゆっくりと遠のいてゆき、その向うから、二人の供をつれた、旅装の侍が、こちらへ近づいて来た。
七十郎は松並木の影にはいり、そこにあった石に腰をかけた。旅嚢を脇におろし、刀を両足の間に置き、萱笠をもっとあみだにして、額の汗を手でぬぐい、衿をくつろげた。――侍は近づいて来て、そこに七十郎のいるのを認めると、笠で顔を隠すようにしながら、前を通りぬけようとした。
「やあ、しばらくだな」七十郎は無遠慮に呼びかけた、「しばらくだな、渡辺七兵衛、休んでゆかないか」
侍は立ちどまってこっちを見た。それは渡辺七兵衛であった。彼は七十郎と同年配だが、四つ五つも年長にみえる。供の一人は万右衛門といって、これも七十郎には見覚えがあった。
「失礼だが、先をいそぐので」と七兵衛が云った。
「いそぐんならいっしょにゆこう」と七十郎はすぐに立ちあがり、ふたたび旅嚢を刀にひっかけて、肩にかついだ。