Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 167.285 Zeichen · 330 Bildschirme
と声をかけた。
「お気に召しませぬか」と一玄は手を停めて訊いた。
甲斐は「結構だった」と云った、「結構だが、そのくらいにしよう、酒は飲まぬか」
「頂戴いたします」
酒は頂くが、自分は中年からの盲人で、ひどく勘が悪いから、そそうがあっては困る、と一玄が云った。
「ではもっと寄るがいい、大きいもので遣わそう」と甲斐が云った。
一玄は辞儀して、膝ですり寄った。甲斐は汁椀の蓋を持たせて、酌をし、少しずつ注いで、三杯まで飲ませた。
「二絃琴というのは珍らしい、初めて見るようだが、なにか伝来があるのか」と甲斐が訊いた。
一玄は恐縮したように、思いついたままの手作りである、と答えた。自分の本業は絵を描くことであったが、三十七歳のときに失明し、それからこのようなものを作った。正式の琴は知らないし、就いてまなぶ師もみあたらない。かつて模写したことのある唐琴を、自分流にくふうして、作らせたものである。二絃琴などといっているが、もちろん法はずれであろうし、曲も勝手に作ったのであるから、人に聞かせたり、施与にあずかる価値のないことも知っている。したがって、一つ土地ではすぐ飽きられるから、足の向きしだいに、次から次とながれて来た。