Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 167.285 Zeichen · 330 Bildschirme
「幾たび聞いても忘れてしまうのだが」と甲斐は手をあげて指さした、「あの黒川郡の山の、ひとところ高い」
兵庫が「ああ」と低く笑いながら遮った。
「七ツ森でございますか」
甲斐も「どうも」と笑った。
「黄金迫の迫という字と、あの七ツ森というのは覚えにくい、迫というのをいつもさかと読んだり、さかりと読んだりしてしまう」
「迫をばさまと読むのがむりでございますから」
甲斐は頷き、眼をほそめて、ひろい展望を楽しげに眺めまわした。
「この眺めを見るのはなん年ぶりだろうか」
そして「ああ」と深く息をついた。
ずいぶん長いあいだ、甲斐は黙って眺めを楽しみ、それから台地を左へと歩いていった。そちらは城の南方で、仙北平野がひらけており、江合川の大きな流れと、川の対岸の町人町を、殆んど眼下に見おろすことができた。
兵庫も黙って、甲斐について歩いた。
「なん年ぶりだろう」
忘れたじぶんに、甲斐はまた独り言のように呟いた。兵庫はそのとき、初めて、静かに云った。
「私がお眼にかかったのは七年まえです、こんどはそれ以来だと思いますが」
「七年、まだ七年ですか」と甲斐が云った、「私にはもっと以前のように思えるが」