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Japanische Klassiker mit Furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 167.285 Zeichen · 330 Bildschirme

Aozora Bunko

甲斐は持って来た証書をそこへ置き、さてどこへしまったものか、と思った。それは重要な価値があった。万治三年、陸奥守綱宗の逼塞から始まり、現在なお続いている、伊達家中の紛争の根は、その証書に記されている。すなわち、「六十万石分割の際には、一ノ関に三十万石を分与する」という文言で、酒井雅楽頭が署名しているのである。

――むろん使いかたによっては、三文の価値もないだろう。

よほどの機会でもない限り、そんなものを出したところで、偽作である、事実無根だ、と云われればそれまでだ。雅楽頭は老中のなかでも筆頭の威勢をもっているし、一ノ関も名目だけではあるが、直参大名に列している。陪臣にすぎない甲斐などの主張、特にそのような非常な意味をもつ証書などで、どんなに主張してみたところで勝敗は明らかだろう。

――但し機会がないわけではない。

よき機会があり、それをさなければ、それは重要な価値を生ずる。ことによれば、雅楽頭を取って押えることができるかもしれない。

「問題は機会だ」と甲斐は呟いた。

「なにか仰しゃいまして」

おくみがそう云いながらこっちへ来た。甲斐は、風呂をもらおうと云い、すぐに、雁屋を呼んでくれ、と云った。