Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 167.285 Zeichen · 330 Bildschirme
足軽長屋から、勘定部屋へ、黒田玄四郎は毎日かよっている。その途中で、女たちは巧みに、そして大胆に彼に近づこうとした。彼女は向島で黒田玄四郎に助けられたことがある。そうして、彼と二人だけでいっとき話しをした。したがって、他の女たちよりは親しく呼びかけられるし、玄四郎のほうでもさして避けるようすはなかった。
もちろん会って話す機会はごく稀で、仕切りの垣根ごしに、ちょっと立ち話しをする程度であったが、幾たびか会っているうちに、おみやの気持が変ってきた。玄四郎は、これまでおみやの知っているどの男とも似ていなかった。顔だちも態度も、きっぱりとして清潔で、眼が特にきれいだった。よく澄んだ、きれいなその眼で見られると、自分のすべてが見透かされ、そして洗われるような気持がする。彼に会うたびに、過去の汚れが洗われて、自分がきれいになるようにさえ、思えるのであった。
おみやは初めて、自分がなにをして来たか、ということを思い返し、その罪と汚れの深さに、ぞっとした。心の底からぞっとなり、そこからぬけ出ようと、決心した。
「あたし生れ変ってみる気になったの」とおみやは云った、「できるかできないかわからないけれど、やってみるつもりよ」