Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.078 Zeichen · 285 Bildschirme

Aozora Bunko

「帰ったら掴みにゆこう」

「つかみに、ですか」

「淵にある深い岩の隙間などで鰭を休める、それを潜っていって手で掴むのだ、宇乃はまだ見たことがなかったか」

「はい」といって宇乃はまた微笑した。甲斐のたのしそうな口ぶりが、子供めいていて可笑しくなったらしい、しかしすぐまじめな調子になり、帯ぐあいを直してやりながら云った、「――おばあさまからお手紙を預かってまいりました」

「母から手紙だって、――」

江戸番のときでさえ、母から手紙の来ることなどはめったにないので、甲斐は訝しそうに宇乃を見た。

「奥山大学さまがおいでになりましたから」と宇乃は云った、「たぶんそのことではないかと存じます」

甲斐はにわかに重い疲労を感じた。

「いつのことだ」

「昨日でございました」

甲斐は「風呂にはいる」と云った。

「お背中をながしましょう」

「いや、それには及ばない」

甲斐は首を振って、出ていった。

宇乃は風呂場の外に待っていて、やがて甲斐があがって来ると、浴衣を着せて汗をぬぐい、またべつの浴衣に替えるというふうに、三度それを繰り返してから、常着を着せた。甲斐は「客があるから食事を少し待つように」