Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.078 Zeichen · 285 Bildschirme
断琴断歌
「放せというに、おのれ」
――あっ、殿。
――殿、暫く、暫くどうぞ。
「供の支度をしろ、馬でゆくぞ」
断琴断歌
寛文十一年三月二十七日。
伊達家の麻布屋敷にいた伊達安芸は、早朝に起きて沐浴し、白の下襲を着て朝食の膳に向かうと、涌谷から供をして来た家従たち、老臣から小姓頭などに、盃を廻した。膳部は安芸みずからの献立によるもので、まえの夜から膳番に支度が命ぜられ、二汁七菜に酒二献であった。次に、安芸は熨斗目麻裃を着け、出陣の熨斗を取って祝ったあと、玄関の式台前でまた酒肴を出し、留守の者から供をする小姓、徒の者たちにまで盃を与えた。
同じとき、本邸にある原田家では、朝食を終った甲斐が、居間でおくみの手紙を読んでいた。それは使いの者が、開門を待っていて届けたもので、四五日まえから風邪ぎみで寝ていたかよが、ゆうべ医者から麻疹だといわれたこと、当分は部屋を閉めきり、屏風を廻して、風に当てないようにしなければならないこと。当人は聞きわけがよく、だだをこねるようなこともないが、見ている自分にはそれが却っていじらしいなどということが書いてあった。
――大事なときだからお暇もあるまいが、少しでもいとまができたら来ていただきたい、口ではなにも云わないが、かよもあなたを恋しがっているようである。