Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.078 Zeichen · 285 Bildschirme
甲斐は眼がかすんでくるので、強く頭を振り、安芸の手をつかんだ。
「涌谷さま、大事の瀬戸際です」と甲斐が云った、「よくお聞き下さい、これは私のやったことです、わかりますか」
安芸は甲斐を見た。
「私が乱心してやったことです」と甲斐は喘ぎながら云った、「酒井家の方がたではない、私が乱心のうえの刃傷です」
安芸の眼がかっとみひらかれた。甲斐は自分の眼に、ある限りの思いをこめて、安芸の眼をみつめた。
「原田」と安芸が云った、喉にこみあげる物があり、咳をすると血塊が出た、「原田、――」とまた安芸が云った、「それが、とおると思うか」
「侯はそのつもりです」甲斐は喘いだ、「よく聞いて下さい、私は一ノ関の与党、涌谷さまとは対立している筈です、私が刃傷したとあれば、誰も不審には思いません、おそらく、酒井侯はそこを覘ったのでしょう、ここをわかって下さい」
三人の仕手が六左衛門を運んで来た。残った二人のうち一人は玄関へ知らせにゆき、一人は安芸と甲斐を看視していた。これで四人だぞ、と一人が云った、五人の筈ではないか、一人はどうした。知るものか、と一人が云い、大書院らしい、と一人が云った。