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Japanische Klassiker mit Furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.078 Zeichen · 285 Bildschirme

Aozora Bunko

「――伊東さまが」

おくみは口をあけた。

「水嵩は増して来るばかりだ、私にはそれがわかる、伊東一族を亡ぼした余勢で、濁流の力は強くなる、眼に見えるようだ」

甲斐は眼をつむった。まるで、押しよせて来る巨大な、防ぎようのない、その濁流の音を聞きとめようとでもするように。それから眼をあいて、静かな調子で云った。

「私は、この堤の上へ、おまえやかよを乗せようとは思わない、おまえにはおまえとかよの生活がある、ゆくすえのことは信助に頼んでおいた、そんなことは二度と考えてはいけないよ」

おくみは眼を拭きながら、暫く黙っていて、それから低い声で云った。

「あたし、今日はどうかしているんです」

甲斐はそっと頷いた。

「あの人たちの、仲のいいところを見たからかもしれません」

「あの人たちとは」

「宮本、いいえ新八さんとおみやさんです」

甲斐はおくみを見た。おくみは泣きべそのような唇つきで、ええ、と微笑した。

「あのお二人は御夫婦になるようです」

「新八と、あの女が」

「二人はいつも逢っているようですし、今日も新八さんといっしょに来ています」

甲斐は暫くして、それはよかった、と口の中で呟いた。