Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 148.519 Zeichen · 296 Bildschirme

Aozora Bunko

甲斐はおくみの肩を静かに撫でた。

「あなたが悪いのじゃありません、悪いのはあたしです」とおくみは云った、「あなたはなんとも思っていらっしゃらないのに、あたしが勝手に、好かれていると思ったんです」

「私はおくみが好きだ」

「あたしばかりじゃなく、兄もそう思いこんでいました」

「私はおくみが好きだよ」

おくみはううと泣いた。

八年まえ、――雁屋が原田家の回米を受持つことになり、信助は日本橋石町の家へ、甲斐を招待した。そのとき給仕に出たおくみは、ひと眼で甲斐にひきつけられ、信助はまた、妹が甲斐に気にいられたと思いこんだ。

――保養のために控え家を持ってはどうか。

信助は甲斐にそうすすめ、自分の費用で、湯島の家を手にいれた。そして、「お側の用をさせて下さるよう」と云って、おくみを付けたのであった。

「好きだけれども、私はこのままでいたい、このままでいなければならないのだ」と甲斐は云った、「これ以上にすすむと、おくみをもっと不幸にし、悲しい思いをさせるからだ」

「あたしどんな不幸だって、いといはしませんわ」

「おまえは知らないからだ」

「なにをですの」

甲斐はちょっと黙った。