Japanische Klassiker mit Furigana
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じゅいんざっき
樹蔭雑記
宮本 百合子
Lesen Sie 樹蔭雑記 (じゅいんざっき) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.566 Zeichen · 10 Bildschirme
私は立ってシェードを押して、又よみかけの本をよみ始めた。
幾分か経ったろう、読みふけて居って自分は、いきなりバサリと音を立てながら、傍にのべた紙に落ちた虫の羽音に驚かされた。
夜更けるまで仕事をして、少し頭がつかれたとき人はひどく神経質になる、私はひどく臆病になる、
又蛾が来たのかなと思って、こわごわ見ると、何か赤い縞の小虫である。
暫くじっと止って居たがやがて急に私の胸元へとびついて来た。
驚いてふりもぎる、拍子に体が宙がえりを打って図らず見えた腹に何か白いものがついて居る。私は始めて螢だったことに気がついたのである。
私は今までにないなつかしみを以て、又胸を這い出したその小虫を見た。
螢には故国の連想が多い。螢を見ると、すぐ黒い透谷の着物が思い出される、悲しいものである。
そうして見ると先刻ホーッと明るんで飛んだのも矢張り此の螢だったのかしら?
自分は微かな滑稽に**しながら、まだ這う虫をみまもった。
暫く胸の上を這って居た彼女は、暫くするとフーッと立って天井にとまった。
アメリカで最初に見た螢だと云うことも、私になつかしい心を起させた。
今まで私の見たどの螢よりも大きかった、若し此が螢でなかったら、私をこわがらせずにはおかない大きさである。