Japanische Klassiker mit Furigana
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ぶしゅうこうひわ
武州公秘話
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 武州公秘話 (ぶしゅうこうひわ) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 107.572 Zeichen · 209 Bildschirme
腰元共も彼女のそんな様子を見ると、「奥方様」と呼ぶのが滑稽な気がして、つい「お姫様」と云う言葉が口元まで出そうになった。
「おい、おい、己はもう十匹捕ったぞ」
と、河内介もとき/″\頓興な声を挙げた。
「まあ、口惜しい! あたしはたった五匹ですのよ」
「ほら、飛んで来た、そうら、あれを掴まえッこだ!」
そう云って河内介が駈け出すと、彼女も負けずに駈け出して、二人が一匹の蛍を争いながら池の周りや遣り水のほとりをぐる/\走り廻る光景は、むつまじい新婚の夫婦と云うよりも無邪気な兄と妹が戯れているようであった。
夜になると、若夫婦は数十匹の蛍を幾つもの籠に入れて廣間に並べ、それを眺めながら小酒盛りに移ったが、二人ともまだはしゃぎ足りない様子だった。河内介はいろ/\馬鹿げた冗談や剽軽なことを云い出して、松雪院を可笑しさに物が食べられないほど笑わせたりした。女中たちも、若殿の話が可笑しいよりは、彼の珍しい脱線振りが可笑しいので、彼が一と言云うたびにみんなどっと腹を抱えた。すると河内介は、
「待ってろ、待ってろ、これからとても面白いものを見せてやるから」
と、何か頷きながら、腰元の一人に耳打ちをした。