Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
とせんば
渡舟場
豊島 与志雄
Lesen Sie 渡舟場 (とせんば) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.509 Zeichen · 24 Bildschirme
――河の悠々たる流れ……。それに似た心境でいたいと願いながら、俺はどうしてもそうなれない。三ヶ年の戦陣生活の後、心身を休める閑静な環境を希求して、それが得られないからであろうか。そればかりではない。俺の手におえないような種類のものが、周囲からひしひしと俺を圧迫してくるのだ。
軍隊では、俺の個人は団体のなかに解消せられて、終日終夜、他人と混淆していた。それから終戦後、俺たちは家畜の群のような一団となって暮し、輸送船につめこまれて、故国へ帰ってきた。ぎっしりつめこまれた上に、船酔い気味の者は寝そべるので、ますます場所は狭くなり、膝を抱えて身を置くだけに過ぎなかった。それから内地の汽車では一層込みあって、つっ立ったまま押し潰されるほどだった。大勢の息と体温とに、俺自身の体臭まで濁ってしまった。
それでも、河のほとりのこの家を望見した時、俺はほっと安らかな息がつけた。時々やって来たことがあるので、よく見覚えがあったし、東京の住宅よりも印象の深いものがあった。屋根の上に大きく葉を拡げてる棕櫚の風情など、心惹かるる趣きを持っていた。ここに母と妹と共に安らかに住むという予想は、心和かな微笑を催させた。