Japanische Klassiker mit Furigana
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せんこうてい「ハビヒツブルグ」
潜航艇「鷹の城」
小栗 虫太郎
Lesen Sie 潜航艇「鷹の城」 (せんこうてい「ハビヒツブルグ」) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 132.395 Zeichen · 263 Bildschirme
ミス・ヘミングウェーがクスンと笑いながら、
「あたし、まえにはチャンドさんを、ちがう人かと思ってたわ。口説き上手で、パドミーニのような娘を悦ばせるかわりに、かならずただじゃ済ませない。よく、世間にあるあの類型ね?」
「…………」
「ところが」
と、云いながら、ヘミングウェー嬢は痛そうに顔をしかめはじめたのです。けれど、まだそれは忍べぬというほどのものではないらしい。
「ただ、あんたは実にまめだと思う」
「まめですか。僕は」
「そう、ほかにも良いところが、きっとあるんだろうと思うわ。だけど、なにしろまめすぎるんでほかが分らなくなるの」
彼女一流の毒舌が、このときはまったく苦痛のなかから発せられました。
「パドミーニ、パドミーニを呼んで」
腰の痛みだけは、私にもさすが触らせない……しかしパドミーニは、いつになってもこの室へ戻ってこない。
(パドミーニがいない。)
それをさっきから、私はミス・ヘミングウェーに、思い出させまいとしていたのだ。彼女はいまコック部屋にいる。回教徒だから、カリーさまのこの日にも、なんのお咎めもあるまい。
そしてその間、私が万事取り仕切ってまめまめしく働き、ほとんど、触らんばかりの身近にいる愉悦を、パドミーニがきて妨げられまいとしていたのだ。