Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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せんこうてい「ハビヒツブルグ」

潜航艇「鷹の城」

小栗 虫太郎

Lesen Sie 潜航艇「鷹の城」 (せんこうてい「ハビヒツブルグ」) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 132.395 Zeichen · 263 Bildschirme

Aozora Bunko

焔が消えると、そのうえをグイと踏みつけて、

「ねえ、どうかお願いです。僕に、帰るだけの金を、貸しちゃいただけませんか。投げて下さい。床に、乞食に投げるように、チャリンと音をさせて下さい」

そうして、呆気にとられた早苗の手から、二、三枚の銀貨を握ったとき、左枝は突然、脳に灼熱するようなものを感じた。

一瞬の間に、苦悶も不安も何処へか飛び去ってしまい、ただ漲るのは、それまで知らなかった異常な活力だけであった。

しかも、激しく押し迫る破倫な衝動のために、いきなり彼は、早苗の手を捉えてグイと引き寄せた。ところが、早苗は振り解こうともせず、まるで、寝た振りをした子供のように抱きすくめられた。唇の端には、無恥な、挑むような、狡そうなものが、そして、眼には、湿けた、暗い水の粒が宿っている。左枝は、いったんは感じた女の顫えが、やがて、消えてグッタリとなったのを知った。

翌朝左枝は、全身が粉々になったような思いで、起き上がった。同じ布団、同じ掻巻にくるまって……電燈は消え、窓は雪明りでほんのりと明るかった。

しかし、不思議な一夜が明けると、一人は憎悪のために、一人は、愛すでもない異常な目的のために離れられなくなった。