Japanische Klassiker mit Furigana
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こぞうのゆめ
潤一郎ラビリンスV――少年の王国
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 潤一郎ラビリンスV――少年の王国 (こぞうのゆめ) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 71.989 Zeichen · 144 Bildschirme
「そう云ったって駄目なんだってば、みんな僕を疑って居て、今夜も探偵が家の様子を聞いて居るかも知れないんだもの。………」
こう云って、又してもわあッと泣き出してしまった。
貝島は、暫くの間あっけに取られてぼんやりして居るばかりであった。明日沼倉を呼び出して早速戒飭を加えるにしても、全体此の事件は何処から手を附けてどう云う処置を施せばいゝか、そんな事を考える餘裕のないほど、彼はひたすら呆れ返って度胆を抜かれて居た。
その年の秋の末になって、或る日多量の喀血をした貝島の妻は、それなり枕に就いて当分起きられそうもなかった。老母の喘息も、時候が寒くなるにつれて悪くなる一方であった。山国に近いせいか、割合に乾燥して居るM市の空気は、二人の病気に殊更祟るようであった。六畳と八畳と四畳半との三間しかない家の一室に、二人は長々と床を並べて代る/″\咳入っては痰を吐いて居た。
高等一年へ通って居る長女の初子が、もう此の頃では一切台所の仕事をしなければならなかった。暗いうちに起きて竈を焚きつけて、病人の枕許へ膳部を運んだり、兄弟たちの面倒を見てやってから、彼女はひびとあかぎれだらけの手を拭ってやっと学校へ出かけて行く。