Japanische Klassiker mit Furigana
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みおつくし
澪標・落日の光景
外村 繁
Lesen Sie 澪標・落日の光景 (みおつくし) von 外村 繁 (とのむらしげる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.889 Zeichen · 268 Bildschirme
しかしそんな私を一寸緊張させたことが起った。妻の体にまたまた異常を来したのである。今度は悪阻も殊の他に強い。私は医者に行くことを進める。とく子は頑として聞き入れない。
「しかしもう恥しがる年でもないだろう」
「女というものは、年によって恥しさが違うだけです。こんな皺だらけの肌を見られるの、いやです」
「しかしそんなことを言ってる場合じゃないよ」
「産むのだったら、診てもらっても、診てもらわなくっても、同じです」
「産むのだったら……」
そう言って、私は言葉を切った。とく子が半面にはこんな恐しいことを考えていたのか。そう言えば、この悪阻とは何だろう。まるでとく子の母体が、妊娠させられたことに、激しい抵抗を続けているようである。或は女の体の深奥には、自分の胎内に宿った新しい生命を嫌悪する生理が潜んでいるのか。そうしてそれが自分の体の危険を感じると、母に母であることをさえ忘れさせるのか。私はこの生命の発生の不条理に呆然となる。しかし私が母体の危険を冒しても、「産めよ」ととく子に命じるのは、等しく恐しいことに相違ない。
「どちらにしても、お医者さんに診てもらうより他はないじゃないか」