Japanische Klassiker mit Furigana
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ぼくとうきだん
濹東綺譚
永井 荷風
Lesen Sie 濹東綺譚 (ぼくとうきだん) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 57.666 Zeichen · 114 Bildschirme
これはお雪が住む家の茶の間に、或夜蚊帳が吊ってあったのを見て、ふと思出した旧作の句である。半は亡友唖々君が深川長慶寺裏の長屋に親の許さぬ恋人と隠れ住んでいたのを、其折々尋ねて行った時よんだもので、明治四十三四年のころであったろう。
その夜お雪さんは急に歯が痛くなって、今しがた窓際から引込んで寝たばかりのところだと言いながら蚊帳から這い出したが、坐る場処がないので、わたくしと並んで上框へ腰をかけた。
「いつもより晩いじゃないのさ。あんまり、待たせるもんじゃないよ。」
女の言葉遣いはその態度と共に、わたくしの商売が世間を憚るものと推定せられてから、狎昵の境を越えて寧放濫に走る嫌いがあった。
「それはすまなかった。虫歯か。」
「急に痛くなったの。目がまわりそうだったわ。腫れてるだろう。」と横顔を見せ、「あなた。留守番していて下さいな。わたし今の中歯医者へ行って来るから。」
「この近処か。」
「検査場のすぐ手前よ。」
「それじゃ公設市場の方だろう。」
「あなた。方々歩くと見えて、よく知ってるんだねえ。浮気者。」
「痛い。そう邪慳にするもんじゃない。出世前の身体だよ。」