Japanische Klassiker mit Furigana
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おぎふくうた
犀星王朝小品集
室生 犀星
Lesen Sie 犀星王朝小品集 (おぎふくうた) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 105.794 Zeichen · 211 Bildschirme
「話なぞとうのむかしに失くしている二人だ。」
「では、何がのこっているのだ。」
「それももう判り切っていることではないか。」
「いのちのことか。」
「よく申した。それを申し受ける日が近づいているとは思わぬか。」
「たしかに近づいているな、きのうより一足飛びに近づいているぞ。」
「その時が来たらどうする。」
「必ずいのちを申し受ける。」
「それはこちらからいいたいくらいだ。」
二人の声音はすこしの狂いがなく、むしろ、お互に念をおし合うように冷酷にうち交された。しかも、かれらは顔をむき合わせることがなく、雨の中にその言葉をたたきつけているようなものだった。いずれの日か、また、どういう不意の機会からか、二人は対い合わなければならなかった。きょうこそ、明日こそという毎日の焦躁と埋積されたものが、つもりにつもって行ったのだ。二人には何もすることはない、恐らく橘姫の存在すら、かれらの眼にはいっていないかも知れなかった。眼にあるものは津の国の人には和泉の人のいのちであり、和泉の国の人には津の国の人のいのちの憎さが見えるばかりだった。かれらは、そのいのちに対きあい、それを奪いあうために生き、その日をあてに生きているのかも分らなかった。