Japanische Klassiker mit Furigana
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おぎふくうた
犀星王朝小品集
室生 犀星
Lesen Sie 犀星王朝小品集 (おぎふくうた) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 105.794 Zeichen · 211 Bildschirme
姫たちばな
はじめのほどは橘も何か嬉しかった。なにごともないおとめの日とちがい、日ごとにふえるような一日という日が今までにくらべ自分のためにつくられていることを、そして生きた一日として迎えることができた。日というものがこんなに佳く橘に人事でなく存在していることが、大きな広いところにつき抜けて出た感じであった。日の色に藍の粉がまじってゆく少し寒い早春の夕つ方には、きまって二人の若者が何処からか現れては、やっと小枝に艶と張りとを見せはじめた老梅の木の下に、しのぶずりの狩衣に指貫の袴をうがち、烏帽子のさきを梅の枝にすれすれにさわらし、遠慮深げな気味ではあったが、しかし眼光は鋭く、お互に何の思をとどけに来ているかを既に見貫いている、激しい顔色をしていた。一人は西の方の築地に佇み、一人は東寄りの角の築地のかげに立っていた。一人が山梔子色の狩衣をつけていれば、一人は同じ山吹色の折目正しい狩衣を着ていた。次の夕方に一人が蘇芳の色の濃い衣をきてくれば、べつの若者はまたその次の日の夕方には、藤色とも紫苑の色にもたぐうような衣をつけ、互の心栄えに遅れることがなかった。また、時には少年の着るような薄色の襲を覗かした好みを見せれば、次の夕方には、もう一人の男もそれに似合うた衣を纏うていた。