Japanische Klassiker mit Furigana
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おぎふくうた
犀星王朝小品集
室生 犀星
Lesen Sie 犀星王朝小品集 (おぎふくうた) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 105.794 Zeichen · 211 Bildschirme
「そちは幸せであるということはいえないが、女に生まれてこれが栄光であることは忘れぬよう。」
「わたくしお二人様のおん命をお受けするほどのものではございませぬ。」
「お前はこの後どうする考えでいるか、決して短慮はするではない。」
基経は橘の顔にたゆたわぬ決意された或る気持を感じて、それを挫いて置く必要があると思った。しかし基経にはそれを挫くだけのちからがあるかは、はなはだ疑わしかった。橘はどこか怒りをまじえた声音になっていった。
「わたくしの考えはもう決っております。」
「いや、お前はいままでよりも確りして生きてくれなければならぬ。」
基経は橘の眼にくい入っていった。だが、橘の眼はなにかに憧れて漂渺として煙っているようなところに、ちらりとのぞかせた瞳の反射が美しいというよりも、気高いものだった。人がそういう瞳の反射を見せるときは滅多にその機会をとらえがたいものだ。基経は身体が引きしまるようにその瞳を感じた。
「わたくしは人のいのちを粗末にするような、あさはかな女になりたくはございません。」
「娘よ。父のそばに寄り添え。」
橘は父に殆ど抱かれるように顔をよせ、ふたたび、それと分らぬ程度に欷り泣いた。