Japanische Klassiker mit Furigana
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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
Lesen Sie 猫の蚤とり武士 (ねこののみとりぶし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 185.496 Zeichen · 368 Bildschirme
正気であったなら、そうするだろう。
ところが、萩丸は痴呆状態にあった。
それに大好きな恋しい菊女が、自分の傍らに引き添っていた。
で、もう萩丸は大満足なのであった。
どこへ行こうと、どうされようと、もうもう萩丸は大喜びなのであった。
が、さすがに時々には、不安そうにいろいろのことを、菊女に向かって訊くことはあった。
この夜も結構な小広い座敷の、床の間を背にして坐りながら、向かい合って坐っている菊女に云った。
「菊女や、紀州へ行くのだったねえ」
「はい、さようでございます」
と、男装して凛々しく美しくなった、年長の菊女は教えるように云った。
「紀州へ参って祖父様へ、お逢いいたすのでございます」
「紀州のご殿でお前と一緒に、いつまでも俺たちは住むんだねえ」
「はいはい、さようでございますとも」
「祖父様はお前を可愛がるよ」
「さあ、どうでございますか」
「俺が好きなお前だもの、祖父様もきっとお前が好きだよ」
「そうならよろしゅうございますが」
「俺は、ほんとうにお前が好きだよ」
「妾も大好きでございます。萩丸様が大好きで」
そう、まさに、その通りであった。
女装していよいよ美しく、痴呆状態となっていよいよ無邪気に、あどけなくなった萩丸の姿は、菊女には可愛く可愛く可愛く、取って食べたいほどにも可愛いのであった。