Japanische Klassiker mit Furigana
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ねこまち
猫町 他十七篇
萩原 朔太郎
Lesen Sie 猫町 他十七篇 (ねこまち) von 萩原 朔太郎 (はぎわらさくたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.483 Zeichen · 58 Bildschirme
そしてまたもとのように、各自の話に熱中してしまった。もうその時には、ウォーソン夫人の顔が真青に変っていた。彼女はもはや、この上客人たちの白々しさと無礼とを、がまんすることが出来なかった。或る発作的な激情が、火のように全身を焼きつけて来た。彼女はその憎々しい奴どもの頸を引っつかんで、床にいる猫の鼻先へ、無理にもぐいぐいと押しつけてやろうとする、強い衝動を押えることができなかった。
ウォーソン夫人は椅子を蹴った。そして本能的な憎悪の感情に熱しながら、いきなり一人の婦人客の頸を引っつかんだ。その婦人客の細い頸は、夫人の熱した右手の中で、死にかかった鵞鳥のようにびくびくしていた。夫人はそいつを引きずり倒して、鼻先の皮がむけるまで、床の上へ惨虐にこすり付けた。
「ご覧なさい!」
夫人は怒鳴った。
「此所に猫がいるんだ。」
それから幾度も繰返して叫んだ。
「これでも見えないか?」
おそろしい絶叫が一時に起った。婦人客は死ぬような悲鳴をあげて、恐怖から壁に張りつき、棒立ちに突っ立っていた床にずり倒れた。婦人の方は殆んど完全に気絶していた。ただ一人、老哲学者の博士だけが、突然的の珍事に対して、手の付けようもなく呆然と眺めていた。