Japanische Klassiker mit Furigana
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ばんちょうさらやしき
番町皿屋敷
岡本 綺堂
Lesen Sie 番町皿屋敷 (ばんちょうさらやしき) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.494 Zeichen · 67 Bildschirme
感激の涙が止め度もなしに溢れ出した。彼女は自分の陰謀が見事に成功したのを誇るよりも、男の誠心に対する感激の念に強く動かされた。それほどに美しい男の心を仮りにも試そうと思い立った自分の罪が空怖ろしくもなった。
「御客人もやがて見えるであろう。十太夫は玄関に出迎いの支度をいたせ」と、播磨は用人を表へ追いやった。割れた皿と、それを割った若い女とが後に残った。
「飛んだ疎匆をいたしまして、何とも申訳がござりませぬ」と、お菊は初めて口を開いた。
その声の低く顫えているのは、彼女が疎匆を悔いているものと播磨は一図に解釈したので、彼は憫れむようにいい慰めた。
「はて、くどくど申すな。一度詫びたらそれでよい。まことをいえば家重代の宝、家来があやまって砕く時は、手討にもするが家の掟だが、余人は知らず、そちを手討になると思うか。砕けた皿は人の目に立たぬように、その井戸の底へ沈めてしまえ」
「はい」
また湧いて出る涙を拭きながら、お菊は欠けた皿をとって庭に降りた。長い袂は柳の枝をゆるがせて、家の宝の一枚は水の底に沈められてしまった。
「実はさっき水野殿に行き逢うたら、腰元の菊はまだ無事に勤めているかと訊ねられたぞ」