Japanische Klassiker mit Furigana
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ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 痴人の愛 (ちじんのあい) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 179.399 Zeichen · 353 Bildschirme
「あの金で買って上げるよ、ね、いいだろう、………」
「だって、そうしたら困りやしない?………」
「困ってもいいよ、どうにかするから」
「じゃあ、どうする?」
「国へそう云って、金を送って貰うからいいよ」
「送ってくれる?」
「ああ、それあ送ってくれるとも。僕は今まで一度も国へ迷惑をかけたことはないんだし、二人で一軒持っていればいろいろ物が懸るだろうぐらいなことは、おふくろだって分っているに違いないから。………」
「そう? でもおかあさんに悪くはない?」
ナオミは気にしているような口ぶりでしたが、その実彼女の腹の中には、「田舎へ云ってやればいいのに」と、とうからそんな考があったことは、うすうす私にも読めていました。私がそれを云い出したのは彼女の思う壺だったのです。
「なあに、悪い事なんかなんにもないよ。けれども僕の主義として、そう云う事は厭だったからしなかったんだよ」
「じゃ、どう云う訳で主義を変えたの?」
「お前がさっき泣いたのを見たら可哀そうになっちゃったからさ」
「そう?」
と云って、波が寄せて来るような工合に胸をうねらせて、羞かしそうなほほ笑みを浮べながら、
「あたし、ほんとに泣いたかしら?」