Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しろいかや

白い蚊帳

宮本 百合子

Lesen Sie 白い蚊帳 (しろいかや) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.800 Zeichen · 18 Bildschirme

Aozora Bunko

軽々した気持で、なほ子は二階へ登って行った。

「いかが」

「ああ」

まさ子は、半分起き上った床の上で、物懶そうに首を廻し、入って来る娘を見た。

「どうもはっきりしないんで困っているのさ――温泉はどうだったい――よく来たね」

「いやに萎れた声ね、どんななの?」

まさ子は、床の裾に腹這いになっている千世子の方に目をやり、

「何だかいろいろたたまったんで悪かったんだね」

と云った。力なく腹のところを折りまげるような姿勢で、

「食慾がちっともないんで疲れて」

と吐息をついた。

眩しくないように足許の台に乗せたスタンドの明りで、なほ子は皿に盛られたままの煮た果物や赤酒のコップなどを見た。それ等は少くとも午後からじゅうそのままそこに置かれていた様子であった。なほ子は、女中を呼んで、そんなものを皆片づけさせた。

「始終そばに置いて見ていちゃ猶食慾が出ないわ。――今日何あがったの?」

「牛乳だといくらでも飲めるから、きのうは牛乳二合ばかり、今日は葛湯も少したべた」

まさ子は、大儀そうに小さい声で、

「ああ、ああ」

と云い、先ず肱をおろし、肩をつけ、横たわった。

千世子が下で、疲れるんだって、と云った時、微妙な一種の表情があったので、なほ子は、屡々ある不眠の結果だろうと思っていた。