Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しらねのふもと

白峰の麓

大下 藤次郎

Lesen Sie 白峰の麓 (しらねのふもと) von 大下 藤次郎 (おおしたとうじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.238 Zeichen · 45 Bildschirme

Aozora Bunko

宿から出してくれた凍りがけの茶受には手は出ない。持参の「ココア」を一杯飲んで、湯上りの身体を横たえた時はよい心持だった。

縁に立って西の方を見ると、間近く山が逼って来て、下の方遥かに早川の水が僅かに見える。湯川に架れる釣橋も見える。紅葉はまだ少し早く、崖の下草のみ秋の色を誇っている。裏の窓を明けると、目の下に古湯の建物が見え、その背後に湯川が滝のように落下している。南の方からも水は来て、すぐ窓の下を轟々と音たてて流れている。渓は狭い、信州上高地のように、湯に漬りながら雪の山を見るという贅沢は出来ない、明日は七曲峠の上で白峰を見たいものだと思う。

ここから上湯島へ三十丁、下湯島へ一里、奈良田へは一里半もあるという、郵便は近頃毎日配達されるが、甲府から四日目でなくては着かぬそうだ。

六

その夜は快く眠った。明くれば天長節、満空一点の雲もない好天気だ。裏の滝壺で顔を洗う、握飯を腰にして平林道の峠を上る、幾十折、雑木を抜けると焼畑がある。また林に入る。暑さに苦しみながら十四、五丁も上ると、北の方に忽然雪の山が現われた。白河内岳という白峰連山の一部であるそうだが、この時はやはり名を知らない。