Japanische Klassiker mit Furigana
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はくはつき
白髪鬼
江戸川 乱歩
Lesen Sie 白髪鬼 (はくはつき) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 112.046 Zeichen · 224 Bildschirme
わしは嘗ての愛妻の――今は憎みても足らぬ仇敵の、唇を吸った。その不思議にも複雑な味わいは今も忘れる事が出来ない。
わしは相手の燃える様な、異様に躍動する唇を感じながら、この妖艶類なき女を、果して憎んでいるのか、それとも、実は溺愛しているのか、我と我心を疑わねばならなかった。
唇の感触から、嘗ての甘かりし日の思出が、まざまざとわしの心に浮上った。いつかも話した、わしと瑠璃子との、みだらな湯殿のたわむれなどが絵の様に思い出された。
だが、ウトウトと夢見心地になって行くわしの心を、パッと打ち醒ますものがあった。わしの復讐心が、きわどい所で、美女の誘惑に打勝たのだ。
わしはグッと心を引きしめ、同時に顔や仕草は一層柔げながら、静かに唇を離して、最後の言葉を吐いた。
「わしはあんたに結婚を申込むことが出来るだろうか」
瑠璃子は何も云わなんだ。何も云わず、ただ深く深く肯いて見せると共に、握り合っていた指先に、思いのたけを通わせて、砕けよとばかり握りしめたのである。
十三人
大阪の川村義雄から、愈々伯父が死亡したこと、遺産はとどこおりなく相続を了したことを通知して来たのは、それから間もなくであった。