Japanische Klassiker mit Furigana
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つぶてしんじゅう
礫心中
野村 胡堂
Lesen Sie 礫心中 (つぶてしんじゅう) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.190 Zeichen · 28 Bildschirme
群衆雪崩を打って立ち分れると、その間を縫って、南町奉行鳥居甲斐守忠燿、手附の与力、配下の岡っ引共を従えて立ち現われました。
「一人も動くな」
鷲のような眼玉に睨まれて、散り残った一団の人数、逃げも隠れもならず、首をすくめ、顔色を失って、ただおろおろと立ち縮むばかりです。
町奉行自身、江戸の街を見廻るというのは、何年にも無い珍らしい事ですが、御改革の徹底を、面目にかけて期して居た鳥居甲斐守は、時には微行で、時には大びらに、江戸の町々を巡って、その冷酷無残な眼を光らせたのでした。
「御公儀御政道を誹謗する不届者は言う迄もない、聊かたりとも御趣意に背く奴等は用捨はならぬぞ、片っ端から搦め捕ってしまえ」
鋼鉄のような冷たい宣言と共に、岡っ引共の手にキラリと光る銀磨の十手、群衆はもう生きた心地もありません。
「絹物を着て居る奴はないか、天鵞絨の鼻緒、唐皮の煙草入――そんな御禁制のものは無いか」
虎の威を借る下役どもは、逃げもならずに顫える男女を、一人一人小突き廻しては取調べるのでした。
結い立ての髪を解かせて、自分で結ったか何うか、群衆の前で試される女、――天鵞絨の鼻緒を切取られて、竹の皮ですげ替えさせられた上、親を呼出して手錠をはめられる小娘、――中には贅沢な紙入を発見されて、縄付にて、引立てられる若い男もあります