Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
「そんなお悪いご酒癖とは、ついぞ今日まで、右馬介も存じませんでしたが」
「はははは。犬も悪かった。あの傲慢な生き物が、わしには、まざと、鎌倉の執権殿そッくりに見えてきたのだ。そこが酒だな。もう余りは過ごすまい」
「ここは闇の河原、ご放言も、まず大事ございませぬが、そんなお胸の底のものは、他所では、ゆめ、おつつしみなされませ。先刻の小酒屋でのお振舞なども、金輪際、ご口外は」
「右馬介は、いつまでわしを子供と思うてぞ。知っている。心得ておるよ。……ところで、除夜の鐘はまだか」
「はて。除夜はとうに過ぎておりまする。やがて東山の空も白みましょうず」
「では、はや元日か。さても、おもしろい年を越えたな。今年は初春の夢占もよからん気がするぞ。なあ右馬介、もう寝るまもあるまい。宿所へ戻って、若水でも汲むとしようよ」
やがて二人の姿が帰って行った先は、北ノ六波羅の一郭だった。
むかしは平家一門の車駕が軒なみの甍に映えた繁昌のあとである。平家亡んで、源ノ頼朝、実朝の幕府下にあったのもわずか二、三十年。――以後、北条氏がとって代ってからは、中興のひと北条泰時の善政、最明寺時頼の堅持、また、元寇の国難にあたった相模太郎時宗などの名主も出て、とまれ、北条家七代の現執権高時の今にいたるまで、南北の六波羅探題以下、評定衆、引付衆、問注所執事