Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
置文
……この上はもう、さいごの心をきめました。そなたは元々、尼前のおん身。草庵に帰って、ひたすら籠っておられるがよい」
しいて、尼を退がらせ、すぐ老臣をよんで、
「――従者は多勢いらぬ。旅輿の支度を命じて給もれ」
と、いいつけた。
そして、また。
「わらわはこれより鎌倉へまいる。わが夫のおさしずを伺うためじゃ。また、次第によっては、執権殿へ御拝謁をねがい、子の高氏の科は、元々、この母にあることなれば、子の罪に代わらせて給えと、お訴えしてみる覚悟ぞ。……が、もしやわらわの留守の中に、一ト矢の争いでも起しては、みな仇事。きッと逸り男どもの荒駒を、城戸の内につながせて、よう留守をたのみますぞえ」
と、いい渡した。
そしてその翌日、彼女の旅輿は渡良瀬川を越え、南の方へ旅立った。
置文
輿に頼る行程は、牛の背よりもまどろしい。女性の旅のばあいは、なおさらである。
担う小者は、一里二里ごとに、肩を代えて行くが、すぐ汗もしとどに喘ぎ出す。
しかし、事態の非常は、緩々たる日頃の悠長さをゆるさなかった。“足利殿の北ノ御方”という威力やら供人の馬蹄の音も、それにムチ打つごとく、遮二無二、旅路をちぢめていた。