Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
折よく、在宅していた為定は、
「おう、めずらしいお文」
と、手にした仮名文をなつかしみ、さてまた、これがその人の子息かと、ひと間のうちに、しげしげと見て。
「ほ。其許がこのお便りにある足利清女どのの御嫡男かの」
「いえ……」と又太郎は、うすらあばたの頬を、どぎまぎ紅くして、さらに居ずまいを改めた。
「――早逝でしたが、兄義高があり、私は次男にございまする」
「が、まあ、兄君がおわさねば、其許がお世継じゃろうが。して御官位は」
「申しおくれました。――下野国足利ノ庄の住、貞氏の次男、足利又太郎高氏といいまする。十五で元服の折、治部大輔、従五位下をいただきましたが、何もわからぬ田舎者で」
「御卑下にはおよばぬ」
為定は、うちけして。
「下野足利ノ庄といえば、天皇領の御住人」
「はい。足利ノ庄の内には、世々、八条院の御旧領があり、それが今上の御料に移されておりますゆえ、畏れあれど、申さばわが家は、朝廷の一被官でもござりまする」
「それ御覧じ。お血筋といえば北条殿には劣らぬ正しい源家の流れ。家職といえば現帝の御被官。なぜ、遠いお旅をば、供人も召されずに」
「とかく、故なき上洛は、鎌倉の幕府の忌むところでございまする。