Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
評議はまだつづけられている。しかし、いくら議しても、問題は原型のままだった。何の対策もえられぬらしい。
もっとも二、三の試案が出なくはなかった。その一試案をもっては、内管領の高資とほか一、二名がしばらく席を立って行く。そして、執権の御座所へ伺い、太守高時の意をきいてまた戻って来る。――そうしたお座所通いも幾度か、くり返されつつ、しかもなお、
「――飛脚のこと、かく対処あるべし」
と、六波羅へ指示すべき幕府方針の一案も見いだしえない有様だった。
――がようやく、その面にみな濃い疲労をたたえ初めてきた頃、誰からともなく、
「では、ひとまず……」
という声が出たのを機に、
「ま、そのような所で」
と、すべての顔が頷きを一つにしていた。
さきに、この集議へ下った執権の言では、「――朝廷が、わが北条氏に抗して、一切の政権を、御手に収めんなどとするわけはない。武力がなくば出来ぬことだ。六波羅飛脚は、どうかしておる。ばかな取沙汰ではあるぞ。事あらだてるな」と、まったく楽観的なお旨だった。
だが、この座ではたれ一人、執権の御意そのままを信奉しようとした者はいない。かかる事態が降ッて湧くと、まことに困ッたものになるが、誰もが執権高時の“君主的暗愚”は、わきまえていた。