Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
あとの処理はこの憲房にまかせられ、早うここを立つのが上策ではあるまいかの。かたがた、都の内にも、もう見る所もあるまいし」
「されば、もとより仰せには従いますが、ただもう一事、心残しがございますので」
「まだ、なんぞ?」
「うけたまわれば明三日、帝には朝覲の行幸(天皇が父皇の御所へ拝賀にゆくこと)あらせられる由。今日、冷泉どのをお訪ねした折、伺いましたが」
「そりゃ、相違ないが。して」
「いずれは御警固として、六波羅衆も、お立ち迎えいたすことでございましょうず。又太郎とて治部大輔、無位の布衣でもございませぬ。立武者のうちに加えて、よそながらでも、御盛儀を拝するわけにはゆきますまいか。せっかく、都へ来あわせていた身の冥加に」
憲房は黙ってしまった。甥の熱意に、聞き惚れていたわけではない。当惑顔というものだった。また、若さというものは、分別者には出ない奇想を抱くものだと半ばあきれ顔にも見える。
しかし憲房にも、その願望をかなえてやりたい気は多分にあった。こんどの旅にしても、単なる都見物が当人の目的でもなし、また肉親のすすめでもない。いまの当主貞氏に継いで、いつかは当然、又太郎高氏が、足利一族の棟梁に立つ日がくる。