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Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme

Aozora Bunko

「は、ないこともございませぬ」

すぐ下は、小壺ノ浦か。

波音をたよりに、松ばかりな丘の暗い小道を、高氏は足さぐりで降りかけていた。

と。右馬介が後ろで言った。

「ここらは人も越えませぬ。……若殿、その辺で、ちとご休息なさりませぬか」

「ム。あれに見ゆる亭は?」

「実朝公の雪見の跡と申し伝えておりますが、今は人も住んではおりません」

「右馬介」

「はっ」

「よりによって、今宵は妙な所ばかりを、連れ歩くの」

「かりそめのお散歩にせよ、街を行けば、足利殿の曹司よと、すぐ人目に見られますので」

「さても、大名の子の悲哀さだなあ」

「されば、そこはお気のどくな御宿命と申すほかありませぬ。……可惜、二度ない青春も、お気ままには振舞えず、その上、御先祖のむごい御遺命まで負わせ給うて、人知れずのお悩みなどは……、まさに名門のお子の悲哀さというもので」

「な、なにっ」

高氏は、かっと、彼をにらんだ。それは右馬介でさえ、これまで、見たことのない恐い顔だった。

「これ。そちはいま、何といった。……御先祖の御遺命が何とか、聞き捨てならぬことを申しおったな」

「ま。それへお腰かけ下さりませ。いや亭の濡れ縁も、こう朽ちていては危ない。