Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme

Aozora Bunko

小殿、どうぞ近い折に、またお会いして給わりませ」

「む、会わいでか。また会おう」

どこか、うわの空の顔を持ちながら、つい、高氏の口に出てしまった。女の反逆を惧れる心が手つだっていた。

大蔵の屋敷では、その夜、高氏の姿が見えぬというので、侍部屋を中心に、騒いでいた。

夕方、右馬介を供につれ、浜の方へ出られたという者もある。そこへ、夜も更けてから、ひどく疲れた容子で、しかも、高氏ただ一人で、帰って来たのであった。

「どうなされました。なにか喧嘩沙汰にでも?」

人々は、眉をひらきながらも、高氏の姿を繞って、物々しく訊ねあった。

「いや、そんな仔細ではないが、右馬介めは、不届きな奴だ。こよい限り勘当したぞ。よも姿は見せまいが、以後近づけるな」

「えっ、あの忠義者を、御勘当とはまた、いかなるわけで」

「言語道断」

とはいってみせたが、高氏には、それ以上の嘘が、とっさには出ず、

「いや、いまはいうまい、やがて分る。なにせい、多年の傅役ながら、快からぬことあれば、三河の郷里へ追っ返した。みなもさように心得おけ」

そのまま、ずんずん居間に入りかけたが、ふと足をかえて、奥の廊へ向って行った。