Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
おくつろぎの宴となってからは、みかども法皇も、時をおわすれ顔で、まことに御父子のおん仲でこそと見えた。
「主上には、ご受禅(み位をうける)の後は、政務のひまにも、講書の勉め、詩文の会など、ひたぶる御勉強のみと伺うが、余りな御精励もおからだが案ぜらるる。まれには、ちと、おすごしもよかろ」
法皇は、後醍醐の御酒量のほども知っておられる。み手ずから酌してあげぬばかりなおすすめの仕方であった。
酒間には、法皇のお覚えよき寿王とかいう冠者の“落蹲ノ舞”などあって、女房たちの座も初春らしい灯に笑いさざめいた。
――頃をみて。
「あまりお酔も深からぬうちに」
と、頭ノ蔵人冬方が、みかどの前に、お笛筥を供える。
これは朝覲の式の古例とか。後醍醐は、父皇のための御笛を、み手に取って吹いた。
そとの濃い闇には、雪が音もなく降り出していた。聞きいる人たちの幻想には、白々と戯れる雪の斑が、みかどの豊かなおん横顔や笛の手に重なって見えるように思われた。
お年ばえといい、おからだの逞しさといい、まさに壮者のお盛りであった。どちらかといえば、御性情も面ばせも、後宇多には似給わず、亡き母ぎみの談天門院の美貌をうけていらっしゃる。