Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
――あの乱で、宮方へ与した武族は、以後ことごとく、末代まで浮かばれぬ破滅に落ちてしもうた。それゆえ、現朝廷の内々のおぼしめしを伺うても、またぞろ、承久の轍を踏んではと、俄に起ちもせぬのではなかろうか」
「いや、逆です」
俊基は、口をにごさない。
ものを曖昧に言い濁さぬ態度こそ、大勢の心理を引きつけてゆくうえには、もっとも大事な指揮者の秘訣たることを、よく心得ているものらしく。
「――御懸念は、無用といえましょう。なんとなれば、仰せの承久ノ乱は、すでに百年の昔。御心あえなく、後鳥羽上皇すらも、隠岐ノ島へ流され給い、宮方は武士の末まで、時の北条氏のため、さんざんな目に遭いましたが、その敗戦のみじめなど覚えている子孫は今では一人もおりません。――ただ、百年すぎても、まだ浮かばれぬ不遇と不平がそこにあるだけです。ゆえに、必然、彼ら承久以来の落ちぶれ武者の子孫は、現状にあまんぜず、事こそあれと、つねに世の変動を望んでおるものと、私には考えられる」
「……むむ、いかにも」
多くの顔がうなずいた。彼の明快な理論に、聞くも酔い、彼自身も酔っている観があった。――が、人々はそのとき、何かにぎょッとした容子だった。