Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
遊び疲れも頃あい。それを機に、その夜の無礼講も下火とみえた。ほどなく、水鳥亭の灯はひそまり、散会の人影や輿や牛車が、人目立たぬほどずつ、京の夜更けを散らばって行った。
が、日野俊基ひとりだけは、まだ立たない。
こういうさいにも、彼のみは、人々の帰りをさいごまで見届けた上で――としているのか、残っている妓を相手に、なお一隅で痛飲していた。
「……どうした。いやに森閑として来たではないか。俄に、川音が耳につく」
「そのはず。もうここには、あなた様しか残っておりません」
「はははは。いやそうか。万珠、浮舟、いっそ、そなたたちと、ここで雑魚寝といたそうか」
「いいえ、お起ちなされませ。お館の近くまで、送ってあげまする。……まあ、重い」
もとより、俊基は、まだ充分に正気である。わざと妓たちの扶けに縺れているだけのものだった。そして水鳥亭の奥深い前栽を外へよろめき出て来ると、物蔭で待っていた一人の武者が、離れぎみに、後ろから尾いて来た。
「誰だ。……まいる者は」
「土岐左近の弟、船木頼春です。兄は洞院殿をお送り申しあげ、ほかの武者も、今宵のみは、万一のため、それぞれのお館まで、お供してまいりました」