Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
おふたり様の上に、恐ろしい運命がかかッているのです。……それを、私はゆうべ、わが子の病気平癒の祈願のため、あの妙厳寺の荼吉尼天堂に夜籠りしているうちに、夢ともうつつともなく、御堂の内で、つい聞いていたのでした。どうぞ、お信じ下さいませ。この身は決して不思議な者ではございませぬ」
聞くうちに。
草心尼は唇を白くした。覚一の姿も、石みたいなものに変った。
「まさか」
と、信じられない気もしつつ、母子のふるえは、どうしようもない。
女は、三人の従者の方を、たえず注視しながら、低い一語一語に、他人思いな情をこめて、
「御要心なされませ。何とか、ここの御危難を遁れる工夫をおとりなされませ。累卵の危うさにあるお身の上とは、とりも直さず、おふたり様の今のことです」
と、告げてやまない。
それを、くるめていえば。――彼女は、自分が夜籠りしていた荼吉尼天堂の縁で語らい合っていた従者どもの恐ろしい企らみ事が気にかかって、それからは、つい、まどろみも得ず、何とかこれを、狙われている受難の母子へ、知らせてやる方法はないものかと、夜明け前に妙厳寺を出て、本野原の途中で待ち、あんな風に、わざと、道連れになったものでした――と、いうのである。