Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
大きく口を結び、面ふくらませたまま控えてしまった。だが、無頼の徒と睨めあっている彼の眼光といい、彼の拳にある一羽の鷹の戦闘的な羽づくろいといい、これは虚勢を張ってみせた若雑どもの胆を冷やすには、まず充分なものだった。
無頼だけに眼先もはやい。
なんとなく、相手に気押されたのも事実だが、とたんに沸いた乗客のざわめき声は、すべて自分らに不利だと見ると、
「……こいつはいけねえ」
たちまちの豹変も恥じなかった。
俄に、銭や、博奕道具なども、どこかへやって、
「オイ、オイ。そこの小母さんたちよ。こっちへ来て坐んな。やい、その年よりの荷物を、誰か取ってやらねえか」
などと、人並な人情味をみせ、すぐ車座を詰めあった。
こう機嫌を直すと、彼らは衆の中では最も衆を明るくする特性を持っていた。――一時はどうなることかと恐れ、また彼らの体臭に近づきかねていた男女も、みるみるうちに、彼らのとぼけや冗談に巻きこまれて、舟は和気藹々な囀りを乗せて、大河の午後をなお溯っている。
「なアみんな、俺たちも悪かったが、日がな一日、舟の中じゃ、何ぼ何でも飽々するじゃねえか。――たとえばよ、俺たち貧乏人の小伜ときたら、何を望もうとしても、生れ落ちた莚からは、身うごきも出来ねえ今の世の中と同じようなもンだろうぜ、この舟は」