Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
「きっと、いま去ッた法師と山伏は、われら主従を、六波羅筋の武者と思い違いしたものでございましょうず。なンとも、ぎょッとした顔つきでした」
「さようかナ。菊王はそう見えもしようが、わしはまさか、六波羅武士とは見えもしまい。遊山姿の絵所の絵師――というつもりで、かく入念に、扮装してまいったものを」
「なかなか」
と、菊王は首を振って。
「藺笠優しゅう、細太刀佩いて、風流めかしてはおいででも、どこか御気魄は、隠しえませぬ」
「というて、公卿の身装でも歩けず、山伏姿という手も古い。――それに、近ごろはとくに、いま見たような一見、宮方びいきとわかる山伏も多いからの」
「吉野、大峰、葛城、そのほか諸山にわたって、ちと、内々のおくすりが効きすぎた結果でもございましょうか」
「いや、人為ばかりではない、時の勢い――。つい数年前までは、われら若公卿が姿を変えて、宮方の士を見出すべく、諸国を遊説したり、月々、文談会など催して、倒幕の時運を呼びおこすに努めたものだが、なんと今日では、逆しまな時風となった」
「そうです、今では、地下一般の風が、世の世直しを、一日も早くと、待ち望んでいるような」