Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
「ははは。釣られ山伏」
物蔭で俊基の笑う声がながれた。
「いざ、この隙に」
と、豊麻呂はすぐうながした。散所屋敷の岡には、平常、何百人もの部下が住んでいたが、今その二十名ほどな仲間内に、俊基の竹ノ子笠の顔もまぎれ込んでいた。そしてこの一団は、高野路とは逆に、北の方へ急いで行った。古市の宿場は、早い足なら一と息のまであった。
古市の出屋敷とは、つまり出張り所のことだ。
散所ノ太夫自身の居館は石川の岡なので、古市は彼の城下町勢力というものだろう。とにかく南河内、北河内きっての繁昌な大部落だった。出屋敷は、そのまン中にある。
「どんな諜者も、ここへは紛れ込めません。分れば散所民の袋だたきにあい、骨まで消されてしまいますから」
豊麻呂は説明する。
赤土の破れ土塀は三町四方もあるという。建物はおおむね土倉か、ほッ建て小屋にすぎぬが、棟数は何十戸かわからない。また、構内の掘割には、荷揚げ場もあり、船倉もあった。
「なるほど、盛んなもの」
俊基は、彼と共に一ト棟の縁に腰かけた。そこが主要建物らしいが、古びた田舎役所に似た程度のもの。――存外に気らくであった。
「お方を弁ノ殿とは、誰一人存じてはおりません。