Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
……それに、はや陽も斜め」
「よし。やろう」
頼春はツイと道を反れて、雑木林のうちに隠れた。菊王もそれに倣って、道の向う側に身を潜める。
やがて、後ろの八荒坊の跫音が、しじまを打って、すたすたと近づいて来た。が、急に、
「おや?」
と、怪しむかの如く、一たんは立ちどまった。そしてまた、大股に、二人の前を過ぎかけた。
待て。
ともいわず、頼春は手にヒラッと太刀を見せて、相手の背へ跳びかかった。いや、それの寸前には、菊王もすでに八荒坊の脚もとを抜き打ちにびゅッと低く薙いでいたのである。
しかし、二た筋の白い閃光は、いずれも空を打ッてしまい、およそ予想もしなかった姿態を描いて勢いよく泳いでいた。そして、その体勢をまだ持ち直さぬ間に、
「しゃッ、洒落たまねを」
と、八荒坊のあざ嘲う声がどこかで耳を打った。
「なにをッ」
菊王は身を翻すのに迅かった。しかし太刀と一ツな奮迅も、
「死にたいのか、この公卿小僧」
八荒坊がビシッと構えた白木の杖を越えてまでは、どうしても、踏み込めなかった。
側面を窺う頼春にしても、おなじで、一杖の両端に、あしらわれている二人にすぎない。いや二人を併せた力よりも格段に、八荒坊一人の方が強かったということに尽きている。