Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme

Aozora Bunko

ばさら大名

「自然、御披見の日が来たものと存ぜられます。怖らくはこれも、御先代の霊のあるところ、今日となったことも、決して遅くはございますまい」

ばさら大名

騎旅は、はかどった。

丹波を去ったのは、先おととい。ゆうべは近江愛知川ノ宿だった。そして今日も、春の日長にかけて行けば、美濃との境、磨針峠の上ぐらいまでは、脚をのばせぬこともないと、馬上、舂きかける陽に思う。

「おううい、おおいっ」

呼ぶ者があった。たれなのか、まだ遠い声である。

又太郎と右馬介とは、

「はて?」

手綱を休めて、きき耳すます。

たしかに、二度めの声も、

「高氏どの。高氏どの」

そう呼んだように思われる。

ところが、近づいたのを見れば、まったく見も知らぬ人間だった。

緋総かざりの黒鹿毛に乗り、薙刀を掻い持っている。もちろん腹巻いでたち。つまり旅行者当然な半武装をした四十がらみの武者なのだが。

――それはそれとして、相見るやいな、この男、

「わああああ。こりゃ卒爾を申した。ごめん、ごめん。……お呼びとめしたのは御辺じゃおざらぬ。高氏ちがいじゃ、高氏ちがいじゃ」

と、独りでおかしがッている顔を斜めに振向けながら、駒もゆるめず、連呼して、駈け抜けてしまった。