Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
「なんの、いらぬ御会釈。それよりはまず伺いたい。わしを高氏とは、よう分りよの」
「いや、それしきなことぐらいは。ハハハハ」と、またぞろ哄笑して、
「――年暮の頃より疾く承知いたしておる。野州足利ノ庄のおん曹司が、忍び上洛しておらるるとは、世間は知らいでも、それがしの耳目となっておる放免(目明し)どもはみな賢い奴、すぐ嗅ぎ知って来たことでおざる」
さてはいけない。運の尽きよ、ただではすむまい。
又太郎の後ろにあって、右馬介は、キシキシと体が軋み鳴るような緊迫した顔を硬め、手を太刀へ忍ばせていた。
けれど、安手によく笑う侍は、なお、下種な歪み笑いを面に消さずに。
「オオそれよ。また数日前には、そこな郎従とおふたりで、淀川舟を山崎辺で降りられたことがおありであろ。これは放免の報らせでのうて、さる貴人の座にてお話に出たことだが」
「……いかにも。そして」
「その御方の言では、六波羅の内にも、かつて見たことのない薄あばたの一曹司と、終日、ひとつ舟に乗り合せたが、そも、いずこの曹司ならんか。……どこやら大容な風、そして異相、まことに凡ならぬ者と、頻りにお気にかけておられしゆえ、それがしが推量にて、それこそ、忍び上洛中の足利貞氏の嫡子又太郎高氏にて候わん、と申せしところ、小膝を叩かれて、あな惜し、さる良き機縁をば逸せしかと、いたく