Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
高時公御一代と申しあげたいが、ここ数年も、こころもとない」
道誉の眸は、高氏の眸をとらえて、離さない。
横にはまた、息をつめて、彼の顔いろを見すましている土岐左近の毛あなから立ちのぼる殺気があった。
あわてまい、身じろぎも危険である。と考えてか、高氏は乾きを覚えた唇もしめさずに凝っといた。
すると、道誉の頬の黒子がニヤと笑ったと思うと、高氏の眸から、眸を外した。
「はははは、ご迷惑かな。かかる心をゆるしたおはなしは」
「いや、ご斟酌なく」
「かもうまいか」
「おたがい地方の守護たる身。など無関心には」
「さもこそ。お互いは若い」
手繰り込むような語気と、その体がもっているといえる妙な吸引力とが、高氏には、ぬらと、自分の生胆に触った気がした。
「……いちいち挙げては、きりもないが」
道誉は、さらに、鎌倉の秕政や腐敗ぶりをかぞえたてた。武家幕府の基幹である武家すらも、心ある者は、みな離れてゆくと説いた。――特に高時の行状にいたっては、多年自分が近侍して眼にも見ていた実例をあげて、その暗愚さを、まるで一狗にも劣るようにいった。
いまさらなんの。驚くほどなこともない。