Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
であった。そしてさッと廊の外へのがれ出ると、後ろで鳰が、ひッ――と声の尾を曳いて、
「こ、小殿っ。おひどいっ」
と怨じるのが聞えた。が彼はそのまま廊の闇をどすどす歩いて、燃えやまぬその五体を、大庭の夜気に立って冷やした。
城の大庭は夜がすみだった。すぐ真上の伊吹山すら影もない。
どこかには月がある。
――追われてでもいるように高氏は朧のなかを歩き出した。まだその足もとは、もつれ気味だった。元服後一年余にして酒をゆるされてからこっち、こんなにも酔いをおぼえたのは初めてだと考える。それしか思惟らしい思惟はなにも泛かんで来ない。
ふと、つまずいた木の根か切株を知ると、彼はそれ幸いのように腰かけて、ふウっと腹いっぱいの酒気を天へ吐いた。すると、吸う息には馥郁たる匂いがあった。
昼、道誉とともに逍遥した梅林が思い出された。彼は顔をうごかした。その顔の上に花があった。近くにも遠くの枝にも――紅梅は黒く、白梅は青く、夜がすみにんでいた。
「……?」
彼のひとみは、そればかりでないものを見た。
ここには、彼以前に、もひとり人影がたたずんでいた。いや、その者も木の根か何かにこしかけていたのらしいが、すぐその辺まで来た高氏の影がふいに崩れるような恰好でうずくまってしまったのを見ると、それに驚いてか、つと起って、こっちを振向いて