Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme
婆娑羅大将
七条坊門を見て、佐女牛の杉並木を横に、兼好を乗せてきた輿は、そこの門内へ入った。
と見えてからまもなくのこと。侍の一名が、おくの橋廊下をこえて、渡殿の蔀の下に平伏していた。
「殿」
それも再三、
「……殿」
といっては、内の答えか、ゆるしかを、待つ風だった。
まだ西日が赤い。小首をかしげて、彼は次の細殿へ入って、そこからおなじように内の主君へ声をかけ直した。
すると、やっと、
「たれだ」
と、中で返辞があった。
「主膳にございまする。行てまいりました」
「主膳か、主膳なら入ってもいい。どうした、吉田の法師は」
「は」
何げなく主膳はさかいの唐戸を開けた。が、壁代が垂れていてどちらの姿もよく見えないのでなお一ばい大きく開けた。すると何を見たのか、五十男の早川主膳が顔をまっ赤にして、さしうつむいたまま、いうべきことばもどうかしてしまった姿である。
「――法師は首尾よく連れて来たのか」
内の者は、べつだん何ともしていない声音である。が、主膳はなお「……は」といったきりなのだ。戸惑いがしずまらなかった。何かご主君が、悪戯をおもいついて、じぶんを試しているのかとさえ疑われたらしい。