Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme
「玄蕃。羅刹谷の下を行け。七条を廻って帰ろう」
口取りの民谷玄蕃に、彼は急に、道をかえさせていた。
この辺。
昼ほととぎすの声ばかりだ。
道誉は、羅刹谷の下に馬を止めて、
「なるほど」
ひっそりと青葉若葉の積み重ねられた一つの峰を、ややしばらく仰いでいた。
ひと頃、ここにいた足利高氏も、また、在京諸大将の大半も、もうあらかた、関東へ引揚げ去ったとは庁でも聞いていたのだが、なんとなく、来てみたかったものらしい。
「あの小右京も、高氏に連れられてか?」
それも眼で見届けたい一つであったが、ほかにも、彼は高氏にたいして、旅行以前に、ちと複雑な復讐を敢てしていたことがある。
帰京いらい、気に病まれていたのである。「やはり彼とは将来、手を握って行かねばまずい」という見地からだ。
「こんどの旅で広く見わたしても、高氏ほどな男は、まず見あたらん。未来の運を賭けるなら高氏しかない。――その高氏と、多寡が女出入りで、意趣を抱き合うなどは愚かであったよ」
翻然と、彼は呟きを抱いて去った。そして七条の河原を西へ渡り、やがて、佐女牛の自邸へ帰っていた。
主人の道誉が、鎌倉の譴責とやらで、帰京早々、十日ちかくも六波羅の内に“足どめ”をくっていたことでは、佐女牛の衆臣すべてが、不安と不平に打ち沈んでいた折だったので、